それでも、すき。


静けさに包まれた音楽室で響くのは、あたしの啜り泣く声だけ。

香椎くんはそれ以上、あたしに近付く事はなかった。


それがまるで
二人のココロの距離を示してるみたいに思えて、余計に涙がこぼれ落ちた。



香椎くんは終わりを見据えるような口調で、ゆっくりと話し出す。


「…瞳とは、小2の時ピアノ教室で会ったんだ。」


もう何も聞きたくなんかないはずなのに、あたしは彼の言葉に耳を寄せた。



「母親がピアノの講師で、俺は強制的に習わされてて。」

そこで瞳に出会ったんだ、と彼はもう一度繰り返す。



…そんなに前から知り合いだったの?

沸き上がる疑問が
あたしのココロに渦巻いてゆく。



そして、香椎くんは言った。

躊躇うように
とても小さな声で。



――ずっと

瞳ちゃんの事が
好きだった、と。




堪らずに、スカートを強く握り締めた。



「小6に上がった頃、瞳は引っ越して、中1になった時、音信不通になった。」


でも、とそこで香椎くんが言葉を切る。


あたしは涙に濡れた瞳を香椎くんへ投げた。





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