それでも、すき。
「遅いよー、委員長。」
お昼休み。
慣れた足どりで音楽室に向かうと、ピアノの前に腰を下ろした香椎くんが居て驚いた。
「…ご、ごめん、」
って、何謝ってるんだあたしは。
香椎くんと音楽室で繰り返す行為以外でも、お弁当を食べる時や、ゆっくりしたい時、ここに訪れるのがあたしの日課だ。
でも、今日は――。
お弁当箱を持つ手に力を込め、あたしは尋ねる。
「どうして…。」
「ん?」
「…今日は、出来ない…よ?」
「うん、知ってる。」
さも当たり前のように言う香椎くんにほっとしたと同時に、更に疑問が湧き上がる。
月に一度訪れる、女の子特有の日。
ほとんど毎日抱き合うあたしたちにも、一応それなりのルールがある。
“生理の時はしない”
「じゃあ、何で…、」
栗色が揺れる。
口ごもったあたしに、香椎くんは笑って言った。
「たまにはセックス抜きで話そうよ。」
なんて、童顔の彼には似合わない言葉。
今日は暗幕に閉ざされていない音楽室には、太陽の光が降り注いで。
一瞬、目眩がした。