それでも、すき。


…言える訳がない。

二人を繋ぐ唯一のノート。
そして、ゆずマーク。


例え、あたしたちの関係がカラダだけでも。

それを人づてに渡されたくなかった、なんて――。




黙ったまま背を向けてワイシャツのボタンを留めるあたしに、香椎くんは納得しなかったのか、尚も話を振って来る。


「何かあった?」

「…別に。」

「本当?」

「…………、」



……何なのよ。

いつもセックスの後は
他人行儀な口ぶりで「またね」しか言わないくせに。

何で今日に限ってそんなに気に掛けてくるの?



「いいんちょー?」


…イライラする。



何も考えてないようなその間延びした声も、自分の物みたいにあたしのタバコを吸う横顔も

あたしに触れる、指先も。


今日は何だか
全てが苛ついて仕方がない。




「本当、平気だから。」

とにかく、今すぐにでもこの場から離れたくて無意識のうちに早口になっていた。


メガネを掛け
ネクタイを掴み、素早く立ち上がる。


でも、次の瞬間
隠し通していた苛立ちが、溢れてしまった。





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