それでも、すき。


ザァ、と風に煽られた木々が揺れる。

次いで聞こえるのは
窓を叩く雨音。


その音に紛れながら
階段を駆け上がると、菜未ちゃんはちょうど音楽室に入って行くところだった。


あたしは切れる息を整えながら

ゆっくりと一歩ずつ、扉に近付いてゆく。



イケナイ事だ、とわかっていても止められなかった。

気持ちが、止められない。



ごくり、と喉を過ぎていく緊張感。



そしてまた一歩、音楽室へ近づいてゆくと

「大和!」

と聞こえた声。



背中が、すっと冷たくなっていくのがわかった。



「ごめんね、もしかして待った?」

「ちょー待ったっつーの。」


紛れもなく、その声は彼。



「でも、本当にいいのかよ。」

「…うん。」


香椎くんと、菜未ちゃんの声で。



「……大和なら、いいよ。」




響く声は、体中の力を奪っていった。






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