恋人は専属執事様Ⅱ
中間試験が終わり、期末試験までの執行猶予を楽しむように日々は過ぎて行く…筈だったのに……
滅多にないお祖父さんとの夕ご飯の席で、私は文字通り開いた口が塞がらなくなった。
「お見合い…ですか?」
「先方が是非、淑乃に会いたいと言ってね…堅苦しいことは抜きに、先ずは会ってみないかね?」
シルバーグレーのダンディーなお祖父さんにそう言われても、今回ばかりは即答出来ない。
だって…
「あの…鷹護さんとのお話は……」
そう、祖父同士の口約束とは言え、私には鷹護さんと言う許婚がいるから…
縋る思いで訊く私に、お祖父さんは残念そうな表情で
「5月末くらいに弓弦君からなかったことにして欲しいと話があってね…」
と言って私を見た。
5月末って言ったら体育祭直後?
試験期間前から執事候補生も学業優先になるから、暫く会っていなかったけど…
私のドレス姿に饒舌になって、まだ結婚は考えていない、私の気持ちを優先したいと言ってくれた鷹護さん。
その気持ちに甘えていて、愛想尽かされちゃったかな…当たり前か。
「会うだけなら…」
俯いたまま何とかそう答える。
口にはしないけど、間を置かずにそんな話をするってことは、お祖父さんは私の結婚を望んでいるんだよね?
だったら応えなきゃ。
私を引き取ってくれたお祖父さんを喜ばせたいから。
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