My Sweet Sweet home
拓兄は入学当初から観光サークルに入っていた。夏休み、冬休みなどの数日を利用して旅行に行くのだ。あたしはそれが気に入らなかった。
”すぐ帰ってくるよ。”
5日もいないなんて長すぎる。”
”お土産いっぱい買ってくっから。あんますねんなよ。”
”いらない”
そんなこと言ってっとホントに買ってこねーぞ。”
”きれいな女のひといっぱいくるんでしょ?”
”こねーよ。”
”うそ!”
”ゆかよりかわいい子なんていないから。”
”それは言われなくても知ってる。”
”ハハッ。バーカ。”
こんなバカげたやりとりを毎回してた。拓兄もよくこりずにつきあってくれたなと思う。
小さい頃、拓兄が修学旅行なんかに行ってしまう時あたしは本気で嫌がっていた。
ただもう高校生にもなるとさすがに、数日いなくなることを本気で嫌がっていたわけではない。
サークルにはキレイな女のひとがいそうで嫌だったこと、お決まりのセリフだとしても1番かわいいって言ってほしかったこと。それだけだった。
それでもいくつになってもおいてきぼりにいい気はしないので、あたしも入学とほぼ同時にこのサークルに入部した。