騎士戦争
姿勢は制止したまま、座るクロスを見下す眼差しでさえ変わらない
「たそがれているような顔をしてたからね。どうしたの?戦争前に臆(おく)しちゃったの」
「今更何を言ってやがる。別に怖がりなんかしねぇよ。……俺は死んでも未練は残さないんだから」
「いいねぇ、その調子だ。死んでも良いという奴は死を前にしても怖がりはしない。愛する者、守りたい者、大切な者、これらを持っている奴は死を前にして背を向ける臆病者になる。
“失いたくない”からね、それらを。死んだら全部パーだ。その点、君ときたら――」
足が下がる
敬意を払うかのようなポーズをして
「立派な剣だ。戦い駒には相応しく、修羅のごとき力を持つのだって頷ける。強者はいつだって“人間”ではないんだ。
死が怖くない君は、どんな死も目を背けずに立ち向かえるだろうなぁ」