騎士戦争
クロスを賞賛していた
しかして、クロスにとっては愚弄にしか聞こえない
「『死んでも構わない』と『死にたい』は違う。俺が怖いのは体に突き刺さる剣だけで、俺は刺される前に刺すだけ。
人間だよ、俺は。痛いのが嫌だから、先に殺すんだ」
立ち上がり、赤い男を通り過ぎる
剣を腰に下げ、歩く足取りは死地へ
「死んでも構わないという割りには『生きたい』んだねぇ。
生きているからこそ痛みがあるんだが、これにはどう思う?」
「せいぜい怪我をしねぇように賢く生きればいい」
「クッ、なるほど。だったら、足下には気をつけることだ。石はそこら辺に転がっているからね。
いつ何が、君を痛めつけるモノとなるかは見えているようで見えないものだ」
流れてくる言葉をあえて無視した
――灰色の空の下
最後に一度、彼は誰もいない地で剣を振るった
生きるために振る剣
殺すために刺す剣
誇りなき、何も持っていない自分でも
「刺される前に刺すだけだ」
立派な理由がそこにあった