姫のさがしもの。


―気がつくと

店内はだんだん
客が増えてきていた。



午前8時だった。



皆、モーニングセットなどを
注文している。



そんな様子に気付いて
宮岸さんは


「そろそろ、
帰らないといけない
時間みたいだね」


と言った。


そして、


机の上にのせていた私の手を
ギュッと握りしめる彼。


…そんなこと

しちゃだめだよ…!



「だめだよ、

帰りたくなっちゃう」



照れ笑いの混じった
困った顔を見せる私。



「そっか。ごめん」


彼は、そんな言葉とは裏腹に、

ますます強く
私の手を握りしめた。
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