姫のさがしもの。


「…わかったよ。

私のことは

その相手に
値しないってことでしょ?」



ケラケラと笑って
私は聞き返した。



面白くも楽しくも
ないけど

笑うしか
ないじゃない…。



「そんな…

そんな言い方
しないでくれよ。」



宮岸さんは困った顔で
頭を掻いた。



それから、
うーんとひとつ唸って

彼は、神妙な面もちになった。



「…俺は、

姫夏のこと好きだよ。


ただ、仕事の
関係のことも含めて、
全てをひっくるめて

俺の特別な存在として
姫夏を丸ごと背負うのは、

勇気がいるんだってこと
分かってほしい。


軽い気持ちなら、

SEXだって簡単にできるし

付き合うなんて
今からだってできる。


だけど、姫夏に対して

俺はそんな軽い気持ちで
接してないから」



「・・・・・。」




彼の言葉はいつだって
「巧い」けれど、


結局のところ、

私を納得させてはくれない。



なんだか巧妙な
言葉のマジックで
言いくるめられそう。



「結局…

愛情に深さが
足りないんでしょ?」


冷たい口調で
聞き返してやった。


そんな私に
返ってきた彼の返答は



「深さ…は、

そうだな、
足りないのかもな」





…絶望という言葉が
ふさわしい

この感情を

どうしてくれようか。





…キスなんて


しないでほしかった。
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