姫のさがしもの。
「だったら…
好きなんて
言わないで!」
じわじわと
涙が溢れ出してくる。
彼は、そんな私の涙を
手で優しく拭いとりながら
「だって好きなんだよ。
姫夏が望んでるような
深さがあるかは
わからないけど
俺は姫夏が好きだ」
強い口調で
彼はそう言ってくる。
…私が望む深さ?
私は何も望んでない。
ただ、あなたの
矛盾した言葉と行動に
腹が立つだけ。
「好きで、
キスしたくて、
でも付き合いたくはなくて…
重荷を背負いたくないから
セックスはしない…
そういうこと?」
涙まじりの弱々しい声で
問いただす私に
困った顔をする彼。
「違うよ。
重荷なんて言ってない。
もう少し
このままでいさせて
ほしいんだよ。
まだ時間が足りないだろ?
好きな気持ちを
育ててから
答えを出させてくれよ…」
…彼の言うことは
ひとつだけ正しくて
まだ好きになったばかりの
関係の中で
好きの深さが足りないと
私が怒るのは理不尽で。
だけど、
彼は仕事の関係性を
理由にあげてくるから
私はそれに
納得がいかない。
そんなどうしようもない、
変えようのない事実を
理由に挙げられたら
私はこの先、
頑張りようもなくて。
それなのに
好きだと言ってくる彼。
何度もキスをしてくる彼。
ついにラブホテルにまで
入ってしまって
私たちの行動は
まるで恋人と変わらないのに
彼は、その深さには
到達していないのだと
否定する。
弄ばれているんじゃ
ないだろうかと
そう思っても
不思議はないでしょ?