姫のさがしもの。
いつの間にか
宮岸さんは私から
サッと離れて
何事もなかったような
顔で立っている。
私はというと
まだボーっとした感覚で、
彼の柔らかい唇の感触の余韻を
感じながら
なかなか会社モードに
戻れないでいた。
「宮岸さん…」
私がそう言うと、
宮岸さんは
「はい?
どうかされましたか?
会議がんばって
くださいね」
と言って
ニッコリ笑った。
その笑顔は
もう営業スマイルに
すっかり戻っていて
私は戸惑ったまま
「あ…はい。
どうも、
ありがとうございました。」
と、一応、
仕事モードで
会釈を返した。
「では、また明日、
宜しくお願いします」
と、深々と頭を下げて
去っていく彼。
その背中を見つめて
ジュースを買うのも忘れて、
私は暫くボーっと
立ち尽くしていた。