蒼翼記
極力音を殺しその階段に一歩足を踏み入れる。






カツ…
ゾワッ!


「っ!?」





厚い靴越しにもわかるような冷気に思わず声をあげそうになる。

隠し通路の中はその入口からとっぷりと冷水が満たされたような濃密な冷気が沈んでいた。



…嫌な予感は、募るばかりだ。


ゆっくりと、階段を降りる。








冷気は僕の膝を、

腰を、

肩を、

ついには頭まで完璧に飲み込んだ。







濃度の高い冷気が肺腑の内側を撫であげる。

背に感じる悪寒は寒さのせいか、悪い予感か。


とにかく、僕は下へ下へと沈む闇に潜って行った。




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