†シークレット・ラブ†


「ただいま…」と玄関のドアを開けると

「お帰り、遅かったな」

と誠司の声が狭い廊下に響いた。



リビングに向かうと誠司が丁度、珈琲をいれている時だった。


その姿が、一瞬
彼と重なって


ドキンと胸の高鳴りを感じた。



「どうした?」


「えっ?別に…なんでもないよ。

珍しいね、こんなに早く帰ってくるなんて」


「そんな言い方はないだろうぉ~冷たいなぁ~」


「ごめん、冗談だよ」


「珈琲飲むか?」

そう言って、あたしを見た誠司の瞳を

なぜか真っ直ぐ見る事ができないあたしがいた。


「うん…ありがとう…ちょっと着替えてくる…」


まるで、誠司から逃げるように寝室に向かいクローゼットから取り出した黒のワンピースに着替えた。



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