粉雪2-sleeping beauty-
a seesaw
―――景色をピンクに染めていた桜も散り、大型連休も過ぎた頃だった。


その日の俺の機嫌は、本当に最悪で。


雇ったばかりの従業員が突然辞め、元請けの会社に頭を下げに行き。


別の従業員は現場で喧嘩して、やっぱり電話で頭を下げて。


“君の会社の子の責任じゃないよ”なんて言ってくれたが、

やっぱりそんなわけにもいかなくて。




「―――てめぇ、岸本!
うちの看板背負って仕事行ってる自覚あんのか?!」


『社長!ストップ、ストップ!!』


殴りかかろうとした俺を、真鍋が必死で止めに入った。



『別に、岸本ばっかが悪いわけじゃないっしょ?!
落ち着いてくださいよ!!』


「チッ!」



とにかく、本当にはらわたが煮えくり返りそうな一日だった。


火山で言えば、大噴火寸前ってトコだ。



「…もぉ、マジで頭痛ぇ…。」


ため息をついて煙草を咥え、ソファーにドカッと腰を下ろした。



『こーゆー日もありますって!』


その横で、真鍋がライターを差し出す。


それを受け取った俺は、何も言わずに火をつけ、深く吸い込んで吐き出した。



『ちょっとは反省しただろ?岸本!
明日から気持ち入れ替えて、頑張れよ!』


『…ハイ、スンマセン。』


なだめる真鍋に、頭を下げる岸本。


そんな光景を横目に見ながら、またため息をついた。



最悪な日ってのは、何もかもが悪い方に転がる。


多分、何にでもムカつくから悪いのだろうが、

頭に血が上っていた俺には、そんなことを冷静に考える余裕さえなかったんだ。


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