粉雪2-sleeping beauty-
a telephone call
―――携帯なんてものは便利な反面、時に俺を縛る。


どこに居ても、何をしててもお構いなしに、相手からの着信が告げられる。



あれから俺は、定期的に佐和と会っていた。


飯食って、車の中でヤって。


ホテルの方がシャワーがあって便利なんだけど、服を脱げば墨がバレるから。


別にバレても問題ないんだけど、説明するのが面倒なだけだ。


だから、服を脱がなくても良い車の中は、最高だと思う。



佐和の話なんて、聞いてるような聞いてないような。


まぁ、覚えてないんだから、聞いてないのと一緒だろう。



会社も順調だし、従業員は増えて忙しいし。


これほど最高な人生を歩んでるはずなのに、何故か虚しさばかりを覚えた。



請求書も家賃の振り込みも、家の掃除も洗濯も。


することなんて、毎日山のようにある。


だけど俺は、アイツが居なくたって生きていけるんだよ。


元々、一人で生きてきたんだ。


金もあるし、女なんて腐るほど居る。


あんな女に関わってた人生が、おかしかっただけだ。



そんなある日だった。


すっかり風は秋のものに変わり、緑だった葉っぱは赤や黄色に変わった。



♪~♪~♪

着信:千里


「―――ッ!」


久しく表示されていなかったディスプレイの名前に、嫌でも心臓が脈を打った。



今更俺に、何の用があると言うんだろう?


出ない理由もない。


そんな思いで、通話ボタンを押した。


< 182 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop