粉雪2-sleeping beauty-
『―――わかった。
後は任せなさい。』


「ありがとうございます。
よろしくお願いします。」


頭を下げる俺に、親子ほど年の離れた社長は笑顔を向けてくれた。


安心して顔を上げ、言葉を続ける。


「今度は真鍋にも挨拶に来させます。
その時は、よろしくお願いします。」


『松本も頑張るんだぞ?』


「はい。」



千里の退院は、明日の朝。


これでやっと、全てが終わった。


まだ真鍋にさえ、何も言っていない。


明日の朝全てを話す時、どんな顔をするだろうか?


きっと、俺のことを引き止めるんだろうな。


だけど俺は、振り返らないから。


これからの人生を、千里と生きていくと決めたんだ。


嵐は何て言うだろう?


アイツなら、わかってくれるかな?


もしアイツが応援してくれるんなら、怖いもんなしかもな。


でも、ルミはきっと泣くんだろうな。


アイツも千里と一緒で、弱いトコあるから…。



この街に来て得たものは、本当にかけがえのないものになった。


手放すのはちょっと惜しくなっちゃうほど、良いヤツラばっかだった。


俺みたいなのを慕ってくれて、本気で心配してくれて。


きっと全部、千里のおかげなんだ。


千里が放つあたたかい空気は、人に伝染するんだろうな。


だけどアイツ、強がってるだけだからさ…。


俺が助けてやんないと、ダメになっちゃうんだよ。


これからみんなから千里を奪っちゃうけど、アイツのためだから…。


許してもらおうなんて、微塵も思ってないよ。


恨むなら、俺を恨めば良い。

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