粉雪2-sleeping beauty-
―――並べられた料理は、オムライスとハンバーグ。


相変わらず、お子様ランチのようだと思った。


だけど、これが一番千里らしいと思う。


真面目に作れば、おふくろの味みたいな和食だって作れるくせに。



『…リクエスト通り、半熟でフワフワだよ?』


「美味そうじゃん。」


『当たり前♪』



そんな風にして囲む食卓は、今更温かいものなんだと気付かされた。


だって俺、中学くらいからろくに家なんか帰らなかったしさ…。


こーゆーの、忘れてたんだ。


これが“幸せなんだ”って、千里に教えられた気がした。


でも、最初に手放したのは俺の方なんだよな。



「…ごめんな、千里…。」


『…何が?』


「色々だよ。」


一口口に入れたオムライスは、世界で一番美味しいと思った。


本物のおふくろの味なんて忘れちゃったから、きっとこれが、

俺にとっての“おふくろの味”なんだと思う。



『…マツが謝ることなんて、何もないよ。
あたしの所為で、こんな人生になってごめん…。』


「―――ッ!」



こんなこと、言わせたくなかったよ。


全ての責任は、隼人さんであり、俺なんだ。



「…何言ってんだよ…。
お前の作った飯食える人生なんて、最高じゃねぇか。」


『―――ッ!』



美味しかったはずの料理なのに、胸が苦しくなったことしか思い出せないんだ。


フワフワした卵は、お前みたいだと思った。


だからきっと、俺はお前の作るオムライスが好きなんだよ。


なのに無情にも、時計の針は進むんだよ…。


ホントはもっと、味わいたかったのに。


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