開かない扉
「隣の町で化け物退治に活躍されていたリリルという人とその仲間の方々が、いなくなったという連絡を受けて、俺は化け物退治の応援に駆けつけたんです。」


「リリルがいなくなった!」


「お知り合いなんですか?」


「ま、まぁな。僕たちもその化け物退治で彼女に助けてもらったクチだし」


「そうだったんですか。あ、俺はオミ・シアーブンと言います。リリルさんは実業家であり、化け物退治の組織のリーダー的存在でもあったので、失踪騒ぎには驚きました。
私は魔法は向いていないようですので、得意の剣技で戦っています。
しかし、不覚にもあの毒液や炎に不意をつかれてしまい・・・ほんとにお恥ずかしいです。」


オミはぶっきらぼうに、自分が倒れるまでのことをナオと千代に説明した。

見た目の傷はほとんどわからない様子なのに比べて、オミの精神はまだ興奮状態にあったので、千代はオミの手をさすって安定をとりもどそうとしていた。


オミは「すみません」とだけ口を開いただけで、ウトウトしてはハッと目を覚ますのをくりかえしてしまうのだった。
そんなオミを看病しながら、千代はこの世界に迫っている恐怖に自分が率先して立ち向かわなきゃいけないと思った。


翌日、オミに朝食を運んだ千代はベッドの前で直立不動で立っているオミにおどろいた。

「まだ完治していないんですよ。準備はこちらでしますから、寝ててくださいね。」

千代がオミをベッドに座らせようとする前に、オミは深々と頭を下げてお礼を言った。


「ずっと手をつかんでいてくださってありがとうございました。あの・・・」


オミはお礼のあとの言葉に戸惑っているようだったので、千代は何か言いにくいことがあるのかとオミにたずねた。


すると、オミは小さな声で千代が救世主なのかと質問してきた。

「どうして、そんなこと?」


「す、すみません。そんなわけないですよね。あなたのような小柄な女性が化け物を一掃できるなんて・・・。リリルさんに助けてもらったと先生もおっしゃっていたのに、すみません。」


「そんなに謝らないでください。((ほんとは謝らなきゃいけないのは私の方なのに。))」








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