駆け抜けた少女【完】

スキップでもしたい気持ちを抑えながら、藤堂達を訪ねに廊下を歩いていると反対側から沖田が歩いてくるのが見えた。


ビクッと、体が反応したのは矢央だけではなく沖田もだ。


二人は一定の距離を保ったまま動けずに互いを探る。


沖田さんと会うの気まずい。


一昨日の夜以来、沖田は自分を避けている。


部屋には一度も顔を見せなかったし、最初から一番世話をやいてくれていたのは沖田なのに。

きっと、お華と矢央で引っかかるものがあるのだろうと思うが、かといって避けられる側の矢央としてはどうしたらいいか困る状況だった。


沖田は、あっ、と一瞬まずそうな顔をした。


それが、ズキッと矢央の胸を抉る。


私、嫌われたのかな…。



「……こんばんわ」

このまま通り過ぎるのが良いのかもしれないと、矢央が一歩踏み出した。

瞬間、沖田が声をかける。


一日半ぶりの沖田の声に、矢央はグッと唇を噛み締めた。


泣いてしまいそうだったのだ。

避けている、のは薄々気づいていたし、先程の顔はあからさまだった。

だから何も言わず沖田とすれ違おうとしたのに、次に見た沖田は微かだったが、その口元は笑みを浮かべていた。



「もうすぐですね、矢央さんの歓迎会。 隊士達皆さん揃うので最初は威圧感たっぷりでしょうけど、気楽に楽しんで下さい」

「……………」


矢央の前に沖田が立つ。

俯く視界の中に、沖田のさらっと靡く髪が映る。


「矢央さん?」


どうしましたか(?)と、いつもと変わらない優しい声。


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