駆け抜けた少女【完】

「矢央――――っ! テメェは何をやってやがんだあああっっ!」


鬼副長、土方の罵声がこれでもかと喉を震わせ広間中に響き渡った。


「―――ふへっ!?」


驚いた矢央は、ツルッと滑りそのまま畳に体を落とした。


「いたたた……」


なんだ今のこの世のものとは思えない程に恐ろしい声は?


恐る恐る上体を起こし、土方を見上げた矢央は口をパカンと開けた。


「え、閻魔大王がいるぅぅ!」

「誰が閻魔大王だ!馬鹿野郎っ!!」


閻魔大王こと土方は、仁王立ちしたまま矢央を睨み下ろしていた。



「な、泣く子も黙らせる、副長の睨み……こえぇぇ…」


原田は、大きな体を永倉に寄せプルプル震えている。

永倉に至っては、無表情だ。

藤堂は………白目を向いている。



「おやおや、さすがの三人も土方さんにはかないませんか」


また、沖田ののほほんとした声がした。



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