駆け抜けた少女【完】

近藤の知り合いであったお華の祖父が孫娘を置いて無念と言い残し亡くなってから、お華は近藤家に住んでいた。


お華には父と母はいない。


小さな頃離れ離れになり、それからは神社を営んでいた祖父と暮らして来たが、その優しかった祖父まで亡くなり、


「強がり、なんでしょうけどね」

本当に一人になってしまったお華だが、小さな口からは一度も悲しいやら辛いやらの言葉は出て来たことはない。


ツネの手伝いは真面目にやり、進んで何でもやる頑張り屋で可愛い少女というのが、試衛館に住む者達が感じていたものだ。



「あっ、山南さん! 後で川に行こうと話してたんですが、一緒にどうですか?」

「いやいや、二人の邪魔をしては悪いじゃないか」

「邪魔? そんな事ないです。 ねぇ、惣司郎君」



お華は顔を赤く染める沖田を見て、(?)を浮かべていた。



そんな二人を微笑ましく見ながらお茶を啜り、


「おっ、惣司郎にお華じゃねぇか! 何してんだ?」

「今から川に行こうとお話ししてたんですよ」

「川っ! いいね、僕も行きたい!」

「平助ぇ、行くのはいいけどよ、お前溺れんじゃねぇぞ?」

「溺れないってばっ!!」


若者達の愉快な会話が、こうしていつまでも続くと思っていた。


なのに―――――――



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