駆け抜けた少女【完】
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「あれ? 斉藤さんですよね?」
茶屋の前で腕を組み、空を見上げている斉藤を矢央は見つけた。
永倉、沖田と共に買い出しに出掛けた先だった。
「さ…」
斉藤を呼ぼうとした矢央の肩を沖田がポンッと叩き、それを制する。
振り向くと、左右に首を振る沖田と目が合った。
「斉藤さんは、任務中です。邪魔をしてはいけませんよ」
「あ、そうなんですか! でも、何の仕事してるんですかね?」
浪士組の任務は見回りじゃなかっただろうか?
隊服も着ず、平隊士もいない。
普通に散歩でもしているように見えたが、斉藤は任務中らしい。
こちらに気づいた斉藤は、ニコッと微笑んだ沖田に小さく解釈すると、スタスタと歩き始め人垣の中に消えて行った。
「あらら、行っちゃった」
「ほぉらっ! ぼんやりしてねぇで、さっさと買い出し終わらせるぞ」
「いたたっ! もうっ、永倉さん腕乗せないで下さいよっ!」
背後から矢央の頭に腕を乗せる永倉に文句を放つ。
悪びれる様子がないとこが、腹が立つ要因だ。
「自業自得だ。 人の怪我を勝手に背負った、お前が悪い」
「永倉さん、そう言われると私は情けなくなります」
苦笑いしながら、やんわりと永倉の腕を退けさせる沖田。
そっと、サラシの巻かれた矢央の頭に触れる沖田の目は悲愴感たっぷりだ。
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