駆け抜けた少女【完】



――――グゥゥゥ……


寝静まった部屋で、矢央はお腹をさする。


お腹が空いた。



沢山眠っていたせいで眠気は一切なく、その変わり飢えが襲う。


むくりと体を起きあがらせた矢央は隣でグーグーと眠っている藤堂と原田を見て舌打ちした。



「なんか、ムカつく……」

「どうした、眠れねぇのか?」

「え……? 誰?」



障子戸は閉められ月の入らぬ部屋は真っ暗で、声の主が誰なのかわからない。


目を細めた矢央に男は「着いてきな」と立ち上がると、障子戸を開け廊下に出てしまう。


着いてこいって言うなら置いて行くなと切に願う。



急いで男の後を追おうとしたため、藤堂の足を蹴ってしまう。


「……ヤバッ!」

「んー……ムニャムニャ…もう、食べられないってぇ……」

「……………」


ーーーやっぱり、ムカつく……。




呑気な藤堂に何故か悪態つく矢央なのであった。



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