駆け抜けた少女【完】
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真っ暗闇の中、小さな足跡が出来ては消されていく。
ベチャベチャと雨の中を走ったせいか、矢央の袴は泥まみれだったが気にする素振りなどない。
以前なら迷っていた夜道も、今では迷わず辿り着いてしまう。
土方達から遅れること数刻、八木邸に着いた矢央は静かすぎることに違和感を感じた。
雨のせいで、気配が消えてる。
まさか誰もいない?
否、そんなはずはない。
ではもう終わってしまい、間に合わなかったのか。
それも違う気がした。
恐る恐る戸を開け、中の様子を伺いながら先へと足を進めた。
暗すぎる。 眼が慣れなければ、まともに歩くこともままならない。
―――ガッ…ドンッ!
「ウヒャッ…」
何かに躓き、前のめりに倒れ込む。
何とか両手を床につけたので、転がることはなかったが、何かが手についた。
ヌル……と、した何かが。
「なに……?」
床に座り込み掌を見てみると、次第に慣れてきた視界に映るものに恐怖が湧き上がる。
――ガタガタガタ……
血だ。 赤黒い、人間の血だ。
「ヒッ………」
血だと気づき手を払うと、その手が今度は何かにゴスッと当たる。
次は何だ?
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