駆け抜けた少女【完】
――――ゴロンッ……
「………く……び……」
黒い髪が赤黒い床に浸っている。
女の頭だけが、そこに転がっていた。
胴体は……
「…………っ!」
矢央は声を何とか殺した。
目の前に、女の胴体が横たわっているではないか。
叫ばなかったのは、土方達に気づかれないためだったが、人間本当に恐怖を感じると声にならない叫びになるようだった。
ひ…どいっ。 この人は、関係ないんじゃないの?
女は平山の連れて来た芸妓だ。
よく見れば、女の死体の傍らに平山の死体もあった。
一突きでやられたとこを見ると、寝込みを襲われたのは確かだ。
「……芹沢さんっ!!」
急がなければ芹沢が危ないと、恐怖に震える足をひっぱたき矢央は中庭に向かった。
―――ガシャンッッ!
庭に面した縁側に辿り着くと、雨の中向かい合う黒装束二人と平間の姿がある。
酒が抜けてないのか、不意をつかれた恐怖か、平間の視点は集中できず既にふらふらだ。
よく見れば腕を負傷している。
「逃げ腰たぁ、男が恥ずかしくねぇか?」
「う、うるさぁぁぁっいっっ! 貴様らこそっ、寝込みを襲撃とは―…」
「黙んな。 わりぃが死んでもらうぜ」
振り上げられた槍の先が一瞬ギラッと光った。
あれはっ……。 助けなきゃっ!!
黒装束の一人の正体に気づいた矢央は、都合良く投げられていた刀を掴み庭に飛び出した。
.