駆け抜けた少女【完】


裸足のまま庭におり、男達の間に小さな体が割り込む。


――――カキィィンッッ!!


金属同士が重なり合い、庭に金属音が響いた。



「―――――なっ!?」

「原田さんっ! 止めてっ!」

「……矢央君っ!?」

「その声は、山南さんまでっ? どうしてっ…どうしてこんなこと!?」



矢央の登場に、原田、山南は困惑する。

だが原田は瞬時に意識を集中させて、槍に力を込めた。


「矢央っ、お前は関係ねぇ! そこを退けっ!」

「嫌だっ! 平間さんっ、ボサッとしてないで早く逃げて!」


原田の腕力には所詮適わない。
こうやって防いでいられるのは既に時間の問題である。


矢央に怒鳴られ、平間はハッとなり後ずさった。


―――ギギギギ…


「矢央っっ!」

「早く行ってっ!」

「す、すまないっ」


平間は背を向け、戸口から逃げていく。

それをチラッと見て安堵した瞬間、体から力が抜けた。


「チッ……」

「まぁいいでしょう。 戻ってこなければそれで」

「矢央っ、オメェッはっ」

「原田君、止しなさいっ」


力が抜け地にうずくまる矢央の腕を力任せに掴み上げた原田を、山南が慌てて制止する。


平間を逃がした。


それは予定外だ。


そして、此処に矢央がいることも予定外でどうしたものかと、原田の腕を掴みながら山南は考える。


「クソッ! 胸糞わりぃ」

「胸糞悪い…? 人を殺しておいて何でそんなこと言えるのっ?」


今度は矢央が原田に掴みかかった。

顔は青く血の気が引いていた。


「……それが、俺らだ。 自分達の志のためなら邪魔者は斬る。 そんだけだ」

「………っ!」

「矢央君……」


震える矢央の肩を山南が優しく包み込むが、それをバシッと払った。

あの優しく穏やかな山南も、人を殺したのだ。



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