駆け抜けた少女【完】
一風吹き荒れ、腰まであった黄金色の髪がサラッと散らばる。
「きゃっ…!!」
ーーーーー何っ?春一番ってやつかな。
一瞬で止んだ風。 そっと視界を広げると、不思議な事に矢央が掃き掃除をしていた直ぐ先に桜の花びらが集まっている。
ーーーあれ? 今、ここに集めたのに……。
風で飛ばされたのか。
でもあんなに見事に集まるものだろうかと、首を捻らせる。
まあいいか。
あまり深く考え込まない性格の少女は、ちりとりを片手に持つと大きな御神木の下に歩み寄った。
この大木は神社に昔からあるものらしく、神主が『この大木に守れているんだよ』と、言っていたことを思い出した。
そんな御利益満点そうな御神木を仰ぎ見て、矢央はにこっと微笑んだ。
「大木さん、いつもご苦労様」
―――ザワザワサワ…
矢央が話し掛けたとほぼ同時、御神木がさわさわと揺れまた桜を踊らせる。