駆け抜けた少女【完】
矢央、永倉、原田を拳骨で殴ったのは、もう一人の部屋の住人。
既に夢の世界にいっていたはずの井上は、三人の騒ぎに起きてしまい怒り奮闘中。
「君達、深夜は静かにしなさい。 みんな眠ってるんだよ」
井上源三郎こと"源さん"と、みんなに慕われる優しきお兄さんである。
お兄さんといっても近藤よりも年上なのだ。
だがその柔らかい物腰と優しい雰囲気で、みんなの良き兄的存在の井上だったか、さすがに眠りを妨げられるのは御免である。
怒られた三人はシュンと小さくなっていた。
「見てみなさい、総司はちゃんと布団に入って寝ているじゃないか。 君達も早く寝なさい」
沖田が寝ている?
否、先程までは自分達の間にいたはず……と、沖田を見て唖然。
自分の布団に入り、規則正しく寝息を立てている。
「…………」
裏切り者。
三人は心の中で意見が一致したのであった。
「いいかい、静かに寝るんだよ」
「はい、ごめんなさい」
素直に謝る三人を見届け、井上はまた布団の中に戻り、ものの数秒でまた夢の住人となった。