だから、君に
「俺にとっては、それがあの人なんです」
ふう、と根岸の吐いた息が白く伸びていき、すうと消えていった。
どこにも分類できない、それでもずっと大切なひと。
僕にもいるのだろうか。
今の僕にとって大切なのは、一体誰なのだろうか。
「……って、何言ってるんでしょうね、僕は」
「すまん、……僕にはよくわからない」
「いや、いいんです、すみません」
ぴょんとガードレールから飛び降りると、かけていた眼鏡が少しずれた。
それを直しながら僕の横に並ぶ根岸に、もうさっきまでの卑屈な表情はなく、いつものきまじめな彼がそこにいた。