だから、君に
【6】秋の始まり
【6】秋の始まり

もう半袖で過ごすには寒すぎるくらいになった十月の半ば、木々はすっかりオレンジに輝き、海もすっかりひとけがなくなった。

二学期頭に受けた三年生向けの全国模試が返却されたこともあり、受験を控え、僕の高校では三者面談が始まることになる。

模試ではそれぞれの志望大学の合格可能性までご丁寧に判定されていて、それと突き合わせながら面談をするのだ。

面談を前に、僕には二つ懸念があった。

ひとつ。いまだに態度をはっきりさせない荒川の進路。

もうひとつ。初めて会うことになる、麻生の親族。
つまり、芹澤さん以外の、由紀の肉親。

唯一の救いは、荒川の面談と麻生の面談の間隔が、一週間空いていることだった。


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