妖魔03(R)〜星霜〜
距離を詰めても解らないということは感覚が鈍いのか。

楽に飛び込める位置にたどり着き、腰に体当たりを見舞う。

女というには些か成長が足らない。

「これは」

私よりも年齢が下のような幼女であり、街で生きていくには難しい。

長い黒髪、黒の眼差し、やせ細った体。

黒髪は何日も手入れがされてないせいでボサボサになっている。

薄汚れたロングティーシャツにジーパンはところどころ破けているようだ。

やせ細った体を見れば、数日何も食べていないことが解る。

廃墟には、幼女の居場所など最初から用意はされてない。

だからといって、私も幼女の居場所を作るなど出来そうにない。

自分の物は自分でというのが信条だ。

幼女が隠れ家にいる理由、後ろでもついてきのか。

素早く動いていたのに付いてくるとは、よほどご飯にありつきたかったのか。

幼女が頬を動かしているところ、保存食を食べたのだろう。

他にも、何か役立つものがないか探っていた感じか。

幼女の頭が大人程、働くかはわからないけど。

何も話さないところを見ると、言葉の類が解らないのかもしれない。

それか、何も語る気はないということか。

私の腕の中で暴れているが、捕まった以上はどうしようもない。

幼女を売ろうなどという考えはない。

だからといって、置いておく気もない。

「自分の身の回りのことは自分で管理するべきだ。食べ物の事は忘れるから、いいね?」

小さな体を持ち上げて、木とダンボールの家から放り出す。

入れないように、しっかりと工夫を施そう。

「今日はもう寝よう」

何もなかったと、目を閉じて夢の中へと入る。
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