妖魔03(R)〜星霜〜
眠りに入ってから何時間が経ったのか。

長く感じたかもしれないし、短く感じたのかもしれない。

眠気を感じるのと、辺りが暗いということは、しっかりと睡眠をとることが出来なかったか。

何にせよ、私は起きた。

隠れ家で眠る際は疲れているせいで浅い眠りはないのだが、傍に人の気配があると感覚で起きてしまう。

数年間で眠っていても人の気配を感じられるようになったが、安眠できる場所での特技は逆効果だ。

木を叩くような音がしているのも、安眠を妨げる原因となっている。

幼女かとも思ったが、何時間も経っているので別の人間が来てしまったという可能性も捨ててはならない。

困ったことに、殺傷能力に長けた武器は作っていない。

隠れ家にまで来るとは思っていなかったからだ。

いや、万が一のために木を削った槍を作っていた。

命のやり取りはや人を傷つける事は好きではない。

不利益をもたらすのなら、仕方ないのか。

木槍を持って、ドアに張り付いて外の音を聞いていますが一向に鳴り止まない。

犯人はドアを叩いているようで、震動が伝わってくる。

ドアが壊れてしまいそうだ。

作ったドアを壊されるのは、過去の作業を無駄にしてしまう。

不意を付くなら、私側からドア越しに槍で刺すしかないのだが。

しかし、相手がアを突き破ってこない理由がわからない。

何かを奪うのであれば、ドアを破って寝込みを襲えばいいだけ。

慎重になってこちらの出方を伺っているのか?

ドアを叩くのが趣味だという奴なのか?

余計な事をする暇があるならば、収集に精を出したほうが有意義な時間を持てる。

野生動物が廃墟にいるとは思えないが、可能性を捨てきれない。

「一気に叩くしかないか」

幼女だった場合、罪を背負うことになるのではないのか。

関係ないんだ。

幼女が得をもたらすことなどありえない。

「終わりだ」

迷いがあるまま、槍をドアに向って突き出した。
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