妖魔03(R)〜星霜〜
「治して欲しいアルか?」

「何?」

「今回は特別無償サービス、ギブアンドテイクはなしでいいアル」

「何を、企んでいるんだ?」

「治療がいらないなら良いアル。アチシは家も見たし、帰るだけアル」

広目は、私の家に何かがあると予想していたというのか?

それこそが、目前の女の条件だったと言うのか?

そう、人の痛みを治すことを面白がるような人間なんだ。

放置しておけばいいのに何を揺らいでいる。

数年、一人でやってきただろ?

人が一人、死のうがいいだろ?

後に人を殺さなければならない選択だって迫られるかもしれない。

だが、マヤは完全なる他人ではない。

マヤが死ねば、私は罪によって壊れてしまうかもしれない。

広目に憎しみは沸かない。

助けられるのは広目だけだ。

私の決断は、広目の治すという台詞によって定められていた。

「治して、欲しい」

「素直な奴アル。特別サービスで、無料で尺八プレゼントアルよ」

「必要ない」

この時、マヤの事しか見えてなかったのは事実だ。

変化に追いつかない自分に戸惑いながらも、マヤが治るという事に喜んでいた。

喜びなど、廃墟に来てから感じたことがなかった。

「じゃ、連れて行くアル」

広目は眠っているマヤを軽々と背負う。

「この場所ではないのか?」

「不可能ではないアルが、ゴムが破けるくらいの確立で失敗する可能性を秘めているアル」

広目は面白がってはいるものの、マヤを治そうとする気持ちは本物なのだ。

だとすれば、広目に従っておくのが良いだろう。
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