妖魔03(R)〜星霜〜
「色々と参考になるわね」

カメリアが紙にメモをしながら頷いている。

「ねえねえ、お兄ちゃん」

「何だ?」

「海って何?」

料理の中に海の幸である商品を言ったがために、チェリーは気になってしまったようだ。

そういえば、村からでは海に入る事はおろか、見る事も出来ない。

「海ってのは青くて深くて大きい、塩水で出来た綺麗な水溜りだって考えればいい」

「大きい水溜り?」

「ああ、八本足のヌメヌメしたタコとか水の中を自由に泳ぐ魚とかいるんだよ」

「わあ」

チェリーは目を輝かせているようだ。

「でもな、鮫と言う生物はな、海に入った人間を食べちまうんだよ」

「えええええ!嘘ー!?人間を?」

「牙を持っててな、足とか手とかに噛り付くんだよ。こんな風にさ」

近くにあった板を二枚持って、何か言いたげなティアの頭を力強く挟み込む。

多少、鈍い音がしたものの、それはご愛嬌。

「こら、チェリーが真似したらどうすんのさ」

「ああ、すまん。チェリー、これはとても痛い事だから、真似しちゃ駄目だぞ」

「うん、解った。でも、ティア姉ちゃんは笑ってるよ」

縛り付けられて二度と構ってもらえないのかと思っていたティアにとっては、感極まる事だったのかもしれない。

「ティア姉ちゃんは他の奴とはちょっと変わってるんだ。本当はとても痛いんだぞ。転げ回るくらいに」

「そ、そんなに?」

「そうだ。だからな、簡単に他の奴を殴ったりしちゃ駄目だぞ。自分がカメリアから叩かれたりしたら、痛いだろ?嫌だろ?」

「うん、でも、お母さんは叩かないよ」

「まあ、今のはあくまで例えだよ。自分が感じている事は、他の奴だって大体は同じ風に感じるんだよ」

「うん、でも、お兄ちゃん、痛いと解ってて、ティア姉ちゃんを叩いたよね?」

「ああ、ティア姉ちゃんは変わってるからな。だからって、モンドに試そうとしちゃ駄目だぞ。解ったな?」

「うん」

解りやすい説明かどうかは解らないが、何とか伝わったようだ。
< 79 / 355 >

この作品をシェア

pagetop