キラキラ

「おぅ、お前か。」



いつものようにスタジオの扉を開けると、
噂の武ちゃんがシンセサイザーの前に座っていた。



「敬太は?」



私が聞くと、



「委員会。」



と答え、またシンセサイザーに向かう。



その横顔を見ながら考える。

祐夏は、
この無愛想で偉そうな奴のどこに惹かれたんだろう。こんな奴じゃなくたって、祐夏ぐらいかわいい子なら、他にたくさんいい人がいるだろうに。



「何?」



見られていることに気付いたらしく、武弘がこっちに顔を向ける。



「別に何も。」



ただ、この真っ直ぐな視線だけは、人を惹き付けるに違いない、とは思う。
嘘のない、真っ直ぐな視線。


――直樹くんの、
あの澄んだ瞳に、どこか似ている。全然違うようで、何かが同じだ。


それを思うと、武弘のその無遠慮な視線に、どうしても惹かれずにはいられない。悔しいけれど。




「悪い!遅れた!」


派手な扉の音と一緒に、涼しげな笑顔で敬太がスタジオに飛び込んでくる。



敬太がいるだけで、雰囲気は明るく和やかになる。


ホッとしながら、リボンをほどき、第一ボタンを外してマイクの前に立った。




< 21 / 45 >

この作品をシェア

pagetop