女王様御用達。
「……なるほどね」
何となく。
何となくだが、この国が見えてきた。
可愛く描かれた挿し絵。
しかしこれはある特定の人物を表すように出来ていた。
後に王になった勇者は、シルルソウの青い花と緑をモチーフにされていて、これは明らかに『国王』だ。
そして化け物はこれでもかと極悪に描いてあり、それは女も同様だ。
しかしその女は、目が緑で髪が金色のお下げ。
そして、服が黒いマタニティドレスだ。
そして、化け物の住処として描かれた場所は、その背景から『宿屋シルルソウ』を連想させるように誘導していた。
これは300年前の話だが、モデルは明らかに『レース』に似せてあり、その子孫は村はずれで生きている事を暗示していた。
……これを、この国の子供たちがみんな読んでいる?
ふざけるな。
「……ねえ、おじさん」
僕はマッチョオヤジを睨みつけていたかもしれない。
「ひょっとして、このバケモノは実在してる?」
「ああ。国はずれにバケモノの子孫が今でも生きているんだ」
……。
「奴ら一族が人間を襲わないように、王様が建国以来ずっと監視をつけて見守ってくださっているんだ」
さっきの子供も、バケモノを殺してやると言っていた。
この国が国交を規制しているはずだ。
外の人間から見れば、これは今も息づく国を上げての差別の歴史であり。
わざとバケモノ役を作る事により、王族は勇者だの慈悲深いだのを印象づけ、国民に『王は絶対的な正義』である心理操作をしていた。
……なんて汚いカリスマだ……。
この国はレースを絶対的な悪にする事で、成り立っている。
何をしたわけでもない、レースはこの国にとって、存在自体が悪人なのだ。