女王様御用達。
「ポチ!!」
その部屋に入った途端、僕は剣を落とした。
月夜の暗闇でもそれは分かった。
彼は、おそらく暗殺者らしき男に蝉のようにしがみつき、ほっぺたに吸い付いていた。
月夜に、とても迷惑そうな目で困惑している暗殺兵の姿を見た。
仲間らしき暗殺兵も固まっている。
「……はあっ!?」
僕が心底いやな声を上げたとき、部屋の暗殺兵は我に返った。
パジャマ姿の僕が木の棒を持って、部屋の前に突っ立っている。
子供の部屋にやった奴と、見張りは?
彼らは目を見合わせ、彼らの中で真の敵が僕だと確信したらしい。
ポチに抱きつかれてない方の男が、自分の背中から二本の短刀を引き出し、中腰で走ってくる。
素早い。
部屋の狭さは僕の戦い方は本来不利だ。
高さのある廊下を使った方がいい。
僕は剣を拾い廊下に一歩出て、床に突き立てる気持ちで力を込める。
彼が、僕を捕まえるように左右から剣を振った瞬間、僕の体は宙に浮き上がった。
剣を一時的に頑丈な木の棒へ成長させ、その力で移動する技。
棒高跳びの要領で、相手と10メートルくらい距離をとり、着地する。
僕を含めて大人1人くらいなら、楽に移動できる。
この方法で、火事場からレースさんを移動させた。
もっとも、あの時は力を込めすぎと体重のせいで、床に穴が開いてしまったが。
しかし、かせいだ距離も、彼に取っては取るに足らない距離。
僕の目の前に立ちふさがり、剣を振るう。
「……っ」
僕は剣を大きな盾状にし、それを防ぐ。
しかし、大人の力でどんどん廊下の端に追い込まれる。
廊下の奥は、突き当たり。
このままでは、身動きが取れなくなる。