みどりちゃんの初恋
そっと耳打ちされた言葉はどくんと心臓が鳴る材料。
「……っえ? ハヤシっち、どうしてそんなこと言うの?」
こそこそと話すあたし達の手は動いたまま。もちろん目も資料を追っている。
「タク機嫌悪いんだもん。みどりちゃんが総平呼んだんでしょ?たぶんそれが気に食わないか――」
言葉を切ってから一度にっこりとあたしに笑顔を向けた。
「――みどりちゃんの様子がおかしいのに自分は何も知らないから」
……えっ? じゃあヒロっちは――
「みどり、雄太郎。もういいわよ」
ヒロっちが立ち上げたパソコンとにらめっこをするちぃはふと顔を上げた。
「みどり、今日部活は?」
「今日は休みなの。ちぃも休――」
――コンコン
「はい。どうぞー」
「失礼します」と開いたドアの向こうには口元に微笑みを浮かべた――
「里美、ちゃん……」
英明のプリンセスが立っていた。
「卓也さん総平さん! 部長と副部長が部活に来なくてどうするんですかっ」
「……里美悪いな」
泣きたい。
「ヒロ行こっか」と立ち上がった総くんは、あたしの頭に手のひらを置いて「大丈夫」と小さく呟いた。