みどりちゃんの初恋

 「あ。俺、卓也くんの話なら聞いたよ」といきなりタツキさんが口を開いた。

「タク? そういえばタクの浮いた話ってあんま聞かないよねえ」

 ちらっとヒロっちを見ながらお茶を啜るハヤシっち。

 自分のことが話題に出てるのに無関心。とっとと帰る準備を始めている。

 「まあ俺は石谷から聞いただけなんだけど」とタツキさん。

 石谷って保健室の先生だよね?そういえば、タツキさんと親友なんだっけ。

「もう少し優しく振ったほうが良いって」

「………目障りなだけだ」

 タツキさんの言葉に本日二言目(あたしが聞いた限りだけどね)のヒロっちは、冷たくそう言い放った。

 帰る準備が整ったらしく、机に広がっていた資料を手に持ちながら「おい、笠井」とあたしを呼ぶ。

「ふえ? なに?」

「帰らないのか、お前は」

「えっ? ……あっ!かえ――」

「――らないわよ。みどり。今日は私の家に泊まるんじゃなかったの?」

「…………うん?」

 そんな約束したっけ、と頭を捻りながら思い出して見るけど、分かんないっ!

 たぶん忘れたんだろーな、って軽く思っていれば、ヒロっちが背中を向けた。

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