境界
 幸子は、どうしてもひとつ気になっていたことがある。

「吾郎さん、ひとつ聞いてもいい?」

「何?」

「吾郎さん、エッチのときのことだけど…。
吾郎さんは避妊しないでしょ。
吾郎さんには奥さんも子供もいるのに、妊娠したらどうしようと考えないの?」

「大丈夫だよ。」

「何が大丈夫なの?
避妊せずにエッチをしたら、妊娠することぐらいわかってるでしょ。」

「そう簡単にはできないから、大丈夫。」

「できてからでは遅いでしょ。
今までも、そんな調子でいろんな女と付き合ってきたの?
本当に、気にならない?」

「気になるとしたら、付き合っている彼女の旦那の血液型ぐらいかな。
例えば、俺はA型だから、彼女がB型で旦那がO型だったら、気になるけどね。」

 こんなにもいい加減な男とは、幸子は思ってもいなかった。

「もしかして、今までに、外で産ましている子供がいるでしょ。」

「さぁ〜」

 吾郎は、肯定も否定もしなかったが、
きっと隠し子がいるに違いないと、幸子は直感した。
 吾郎の非常識さには、驚かされたが、
なぜだか、このときは吾郎を憎めなかった。



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