境界
 史彦は、幸子の父親と顔を会わしたことはあるが、挨拶をする程度で、ましてやお酒をいっしょに飲むのは、はじめてだった。

 史彦も何を話したらいいのかわからず、
気まずい雰囲気が数分あった。

「史彦君、幸子のことだが…、」

「何かありましたか?」

「うーん、話しづらいのだが、最近の幸子に手を焼いてて、どうしたらいいのか?
よくわからないんだ。
父親の私が、娘の彼氏に相談することではないと思っているが…。
情けないが、他に相談する相手がいなくてね。」

「実は、僕も…。
悩んでいました。」

「史彦君の前でも、普通じゃないのか?」

「はい…。いつもイラついていたり、
言ってることが支離滅裂で、物忘れが激しいというか、
最初から覚えていないというか、自分というものがなく、脱け殻のようにボーッとしてたり…。」

「そんな状態…?」

「何か原因があると思うのですが、僕には全く心当たりがなくて…。」

「私もなんだよ。
私から幸子に聞いても、反発するだけで、逆効果なんだ。
申し訳ないが、史彦君からそれとなしに聞いてくれないか?」

「はい、わかりました。」



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