テアトロ・ド・ペラの憂鬱
足元はいつものアーミーブーツではなく、セッタだけにセッタ(これが判るのは日本通のピピだけかもしれない)。
アコ達同様、傘を差していなかったらしい。
鍛えられたタフな裸体と鮮やかな緑色の短髪は、したしたと湿って小さな滴を幾数にも抱えていた。
―――セッタ[Settan]。
年齢は確か二十六歳だった気がする。
緑色の短髪をワックスでキュウピイのように逆立て、顔付きはどこか東洋系。
だが、産まれも育ちもイタリアで、趣味は筋トレと刀鍛冶、それからバールに入り浸ること。
ここ、テアトロ・ド・ペラの住人の中では一番無口だが、ヤることはヤる男なので、アコ、ピピ、ボウラーの異常なテンションに弾かれることなく調和している。
アコによれば、ボスの次にガタイがいい、らしい。
「どこに、行ってたの?」
いつの間に開けたのか、昼間っからグラッパをたしなむガフィアーノがセッタを見る。
全身ずぶ濡れ、それはまあ予想の範疇として、しかしその手にボーガンはなかった。