テアトロ・ド・ペラの憂鬱
次にセッタに向き直ったカーラは、目線の変わらない彼に気の毒そうな顔を見せる。
「…急な仕事だったな」
いつもより傷付いているそのつぶらな瞳を見返して、カーラは逞しい眉を寄せた。
セッタの腕はこの業界でも有名な程なのだ。
真面目で経験もあるし、どんな仕事だって完璧にこなす優秀な部下。
なにより仕事の仕上げ方が、芸術的なまでに「なにもなかった」かのような風合いなのだ。
しかしまさか。
「今回は俺の落ち度だ。悪かった。報酬は弾む」
こちらが本部に向かっている隙に、カーラである自分を通さず、直接ここ、テアトロ・ド・ペラへ仕事の指示が来たらしい。
セッタがそれを律義に受け、完璧に遂行したことは聞かなくとも判る。
「もうあんまり、猫は、殺したくない…」
あぁ、ガタイがよくて真面目で筋肉バカのくせにガラスのように繊細な彼を傷付けてしまった。
「あぁ、解っている」
彼の「腕」は、「猫」を殺す為のものじゃないのというのに。
カーラの視線が背後の四人に訴える――助けてくれ、と。
「…セッタァ、言っちまえ!ん?今晩、なに食いてぇんだ?」
それにいち早く反応したのはピピ。