真面目なあたしは悪MANに恋をする
カラオケの部屋を出てすぐに透理さんも後をついて出てきた

もしかして茉莉、一人だけ?

「あ…茉莉は…」

「放っておけ」

片岡君はぶっきらぼうに答えると、カウンターにいる30代の店員さんに手をあげて、店を出ていく

あたしはまだ、片岡君に引っ張られながらずるずると歩いている

店外に出ると、駐輪場いたケンケンがバイクにまたがってヘルメットをかぶって帰る準備万端になっていた

「え? 帰っちゃうの?」

あたしはエンジンをかけ始めたケンケンに声をかけた

「もち、帰るよ。何で?」

ケンケンが不思議そうな顔をして答えてくれる

え? 茉莉と付き合ってるんじゃないの?

仮にも茉莉はケンケンの彼女だよね?

カラオケボックスに一人、残して笑顔で帰れちゃうの?

「ま、茉莉は?」

ケンケンが口元を緩めるなり、右手を挙げて横に振ると、何も答えずにエンジンをかけて道路に出て行ってしまった

本当に帰っちゃうの?

ケンケンの後ろ姿がどんどんと小さくなっていき、ついには見えなくなった

あたしはケンケンが走り去った道路を眺めた

「帰っちゃった」

ぼそっとあたしは声に出す
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