「……どうしたの?」


「……っ…………」


藍希は、無言でパジャマを握る手の力を強める。



「……………」


なんだかすごく抱きしめたくなって、俺は藍希の背中に手を回した。


「………………」


「………………」


藍希がさらにしがみついてくる。


「……怖い夢でも見たの?」


藍希の髪を梳きながら聞いた。




「………死ぬことを考えてたの…」


「(あ……)」



そうだ――――



忘れかけていた―――――…


この子は病気なんだ…


心臓の病気――――…



「…わ、私……馬鹿みたい…自分で考えて自分で怖くなるなんて…考えないようにしてるのに………」


「っ…………」


胸がズキンと痛んだ…。


    “考えないようにしてるのに………”


「藍希……俺……」


「うぅん、大丈夫、心配しないで…ごめんね、急に来たりして……」


そういう藍希の声は微かに震えていて―――…



「わ……私っ、帰るねっ…」



背中に回っていた藍希の腕が離れる。


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