恋口の切りかた
円士郎様、おつるぎ様、と隻眼の尼僧は私たちを交互に見て、


「お二人が剣術の天才だとするならば──麒麟児の仙太は、ここ」


コツコツ、と細い指が自らの頭を叩いた。


「大人を圧倒する頭脳を備えた、紛れもない天才でございました。

元々ただの見せ物芸人だった旅の一座を、当時たった十の子供が一人で盗賊に仕立て上げたのです。
そりゃ、末恐ろしいと噂になったものですよ」


前に橋の上で会った時、
遊水は、自分も子供の頃は芸をしながら各地を回ったと語っていた。

それが──ただの旅芸人としてではなく、盗賊として一味を率いていたというのか。


「もっとも、旅の一座に扮して緋鮒一味が各地を回って活動していたのはほんの二、三年余り。
頭目の仙太さん本人が姿を眩まして──まあ、彼一人の力で動いていたようなものですから、一味は解散したと聞きました。

そのまま盗賊でいたなら、間違いなく大盗賊になっていたでしょうに。ですから、この町で成長した仙太さんに会った時はなかなか衝撃的でしたよ」

「あんたは、あいつについてどこまで知って──」

円士郎が何事か言いかけて正慶を見て、

「そうか、『それ』も知ってんのか……さっき『仙太に頼まれたのか』って言ったのは、そっちの意味かよ」

とよくわからない言い方をして黙った。


「おいおい、冗談だろう!」

声を上げたのは隼人だった。

「十そこそこのガキが盗賊の頭目なんて……」

「おつるぎ様はその十そこそこで、大人の白浪を六人も斬ったそうですが」

黙ったままの私を隻眼に宿して、尼僧はそう言った。

「同い年で白浪を斬る子供がいれば、白浪を率いる子供もいる、ということでございましょう。

もっとも、その二人が同じ町にいて、その両方と知り合いというのも……円士郎様。
不思議な因果でございますわねえ」


ホホホ、と正慶は笑った。
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