恋口の切りかた
円士郎の瞳は、さっきまでとは一変して苦しそうな色が浮かんでいて──

「ごめんな、留玖。お前には伝えないほうがいいかと思ったが、やっぱり言っとかなくちゃならねえと思ってよ」

私は目を見開いて、円士郎を見上げて……


後ろで息を呑む気配がして、隼人が「そうか──おつるぎ様は幼い頃に村を盗賊に……」と呟くのが聞こえた。



「遊水さんが……盗賊?」

自分でも、どうしようもなく声が震えるのがわかった。



「それでも、あいつは俺の友達だ」

円士郎は私の目を真っ直ぐ見つめた。



そんな私と円士郎を眺めて、正慶が肩をすくめ、

「『緋鮒』の仙太って言えば、私たちのような者の間では有名でしたよ」

と言った。

「緋鮒──」

円士郎が呟いて、

「あの容姿ですからねェ。そんな通り名が」

と正慶が説明した。

「もっとも、昔は瞳の色も空のような青色で、髪も白銀のような色でしたが──ああいうのは変化するものなんですねェ。
この町で私の所に挨拶に来たあの男を久方ぶりに見た時には、驚いたものです」

「盗賊にしちゃ、随分と可愛らしい通り名だな」

後ろから隼人がそう言うと、


ふふ、と正慶は意味ありげに再び袖口で口を隠して忍び笑いを漏らし、


「可愛らしい魔物でしたよ」


とこぼして、信じがたい内容を語った。


「緋鮒の仙太──別名『麒麟児の仙太』とも呼ばれてまして、
『緋鮒』の一味を率いるこの盗賊の頭目はね、

各地を荒らし回っていた当時──

数えで十歳そこそこの──幼い子供だったのですよ」
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