恋口の切りかた
素手で突っ込んできた一人目の腹に、俺は全身全霊の怒りを込めた渾身の蹴りをくれてやってあっさり悶絶させる。

それを見た残りの連中が、これまたお約束通りに匕首や刀を抜いた。

げえ、と言って、横で隼人が顔をしかめた。

「おいおい、やっぱりこうなるのかよ……。
話し合う気なら、初めから番方だって名乗ったほうが連中も大人しくなったんじゃねーのか?」

「今の俺たちが役人って格好か?」

隼人の言葉に、俺はそう言って鼻を鳴らした。

屋敷にいるところを夜に呼びつけたため、隼人は袴を付けただけの普段着だし、俺に至っては遊び着の着流しだった。
もっとも、刀だけは二本差しで来ていたが。

「は! 上等だ!」

留玖を拐かされて怒りが爆発寸前の俺は、嬉々として状況を受け入れる。
ちょうど、大暴れしたいところだった。

「大怪我したい奴からかかって来いや!」

喚きながら小太刀と打刀を抜き放って両手に構えた俺を見て、隼人がげんなりした表情を作った。

「この場に馴染み過ぎだろ、アンタ。
どんだけ場慣れしてんだよ。こうやってるとただのチンピラにしか見えねーぞ」

言いつつ、隼人も小太刀を抜いて、

「っと、刃傷沙汰はマズいんだったな」

刀を返して構えた。

俺も手の中で両の刀を返し、峰打ちの構えをとって

「この結城円士郎様に喧嘩売ったらどうなるか、てめえらの体にたっぷりと教えてやるよ」

我ながら目元は全然笑えていない気がしたが、口の端を笑みの形に吊り上げた。
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