恋口の切りかた
ならば、誰がその「複数の人間」なのか。

女の侠客などそうそういるものではないと思った俺は、だからあの廃寺で「鵺」の側近だという尼僧にカマをかけてみた。

が、結果はあのとおり。

ただし、美貌の女侠客は俺の考えを惜しいと言った。

そしてその帰り道、寺を出た隼人は俺に「あれは男だった」と驚愕の事実を伝えてきた。


隼人は、男装している留玖のことも一目で女だと言い当てている。

信用に足る情報だった。


だが暗い屋内だったとは言え、目前で裸の背中まで見たのに相手が女ではないと気づけなかったというのは、信じがたいことである。

成人の男と女では体格が違うし、声も違う。

普通ならば気づけるハズだが──何故だろうかと考えて、

所作。服装。立ち位置。俺たちとの距離。

計算し尽くされた「見せ方」で、相手が観客の俺たちに対して巧妙に男の体格を隠し通していたからだと悟った。

加えて、声音には作られた裏声のような不自然さはいっさい無かった。


ここまで考えて、

こんな真似が出来る者が一人だけ、俺の脳裏に浮かんだ。
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